現代では、「肌色」という言葉が言い換えられ、文具などから消えつつあります。
私が子どもの頃に使っていた、色鉛筆やクレヨンには、当たり前のように「肌色」と表記されていました。
「肌の色」と解釈することもなく、ただ、この色=肌色という認識でいましたが、それは私がまだ幼く、肌の色が人種によって様々あることを知らなかったからだとも思います。
この記事では、現代で使われている「肌色」の言い換え例と、肌色という言葉の歴史、言い換えられた理由などについてお伝えしていきます。
肌色の言い換えはいつから?そもそもいつから肌色と呼ばれていた?
肌色を言い換えた例として、大きな変換事例は、大手文具メーカーが「肌色」の表現をやめたこと。
ぺんてるが1999年に、三菱鉛筆・サクラクレパス・トンボ鉛筆3社が、2000年に「肌色」の言い換えを発表しています。
もともと「肌色」という言葉は、日本人の肌の色合いを表す淡いオレンジ色系の色名として使われていました。
この言葉は、江戸時代以前、仏教が一般に広まる以前の日本で「宍色(ししいろ)」として知られていたとされています。
宍とは、古くから食用とされていた動物の肉を指す言葉。
しかし、徳川綱吉の時代に始まった「生類憐れみの令」により、宍色という言葉は避けられるようになり、「肌色」という表現が広く使われるようになりました。
時代は流れて大正時代になると、自由画教育が導入されて絵具や色鉛筆の需要がグンと上がりました。
昭和初期には、子どもたちが人物の顔を描く際に一般的に使用されるようになった、と言われています。
肌色の言い換えはなぜ起こったのか?
実は、日本では長らく人種差別に関する意識が低かったとされています。
この背景の中で、多民族が共存する中で、一つの肌の色を「肌色」と称することに差別的な意味合いを指摘する声が高まりました。
教育現場でも「肌色」という言葉を使うことに抵抗感を持ち始め、この問題が2000年頃に大手文房具メーカーが「肌色」を言い換えるきっかけにもなったのです。
ファミリーマートでの話もありましたね。
2021年に女性用下着を関西で「ベージュ」の表記で販売。
それを、販売を全国展開する際に、客層を広げる目的で「ベージュ」から「はだいろ」に変更しました。
すると、不適切ではないかと指摘され、結局、商品は全部回収という事態に…。
これは、文具メーカーが肌色の言い換えを行った後の出来事だったため、特に注目が集まってしまった事例だとも考えられます。
また、iPhoneで表示される絵文字が、白人を連想させるものが多く差別的だと問題になったこともありました。
それを受け、Apple社は、実際にはない肌の色をデフォルトにして、全6種類から肌の色を選べるように変更しました。
子どもの頃から当たり前のように使ってきた「肌色」ですが、言われてみれば肌の色は一色ではないのは確か。
日本だけの特殊な呼び名として使えれば問題ないのですが、「skin color」と訳してしまうと、この色は違う!となるのは頷けます。
肌色の言い換えで採用された3つの言葉とその意味
肌色の言い換えとしては、下記の3つがあります。
・ペールオレンジ
・ベージュ
それぞれの色には次のような意味があります。
①うすだいだい
1つ目の肌色の言い換えは「うすだいだい(薄橙)」。
語源は、ダイダイオレンジという果物です。
ダイダイオレンジを思わせる明るいオレンジ色を基調としており、オレンジにちょっと赤と黄色を混ぜた感じで、とっても鮮やかな色味。
これに「うす(薄)」がついているので、薄いオレンジ色です。
②ペールオレンジ
2つ目の肌色の言い換えは「ペールオレンジ」。
ペールは、英語でpaleと書き、「薄い」という意味です。
つまり、薄いオレンジなので、言い方が違うだけで「うすだいだい」と色合いはほとんど変わりません。
③ベージュ
3つ目の肌色の言い換えは「ベージュ」。
これはフランス語起源で、黄色や茶色がかった淡い色を指します。
日本工業規格では、ちょっと赤みがかった淡い灰色の黄色として定義されています。
ファンデーションなどで、ベージュという表現は当たり前のように使われてきました。
日常的によく使われる色なので、肌色の新しい呼び方としてはすごく馴染みやすくて、自然に使えそうですよね。
新しい「肌色」としては一番しっくりくる人も多いと思います。
まとめ
以上、肌色の言い換えについてお伝えしました。
決して「肌色」という言葉を使ってはいけないわけではなく、シーンに応じて会話の中で日常的に使われることもあると思います。
ただ、公の色表現としては変化しており、肌の色は全世界共通ではない、ということをわかっておくことが大切ですね。